【物流関係者必見】倉庫業法の違反事例や登録基準を解説
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最終更新日:2023/06/12
ファッション物流
物流事業を支えるうえで欠かせないのが物流倉庫です。荷物を保管するという役割以外にも、物流の重要拠点でもあり、スピーディーかつ正確な配送に貢献しています。
しかし、一口に倉庫といってもさまざまな種類があり、なかには荷主の荷物を預かる「営業倉庫」も存在します。
営業倉庫を運営するうえで重要となるのが、倉庫業法とよばれる法律です。本記事では、倉庫業法ではどのようなことが定められているのか、注意しておきたい違反事例の内容や、倉庫業者として登録する際の基準などもあわせて紹介します。
Contents
そもそも倉庫業とは
倉庫業とは、荷主の荷物を預かり、倉庫で保管するビジネスモデルのことです。
自社で倉庫を構えようとすると大規模な設備投資や賃料が発生し、倉庫を管理するスタッフも必要となります。
そこで企業や店舗に代わって荷物を預かり、荷主の財産を適切に管理する倉庫業のニーズは少なくありません。
倉庫業は物流を支えるうえで重要な産業であり、ひいては国民生活を営むうえでも欠かせない公共性の高い事業といえます。
そのため、倉庫業を営む企業は国土交通大臣の行う登録を受けなければならないと法律で定められています。
倉庫業法とは
倉庫業の運営にあたっては、倉庫業法とよばれる法律を正しく理解しておく必要があります。
倉庫業法の目的
倉庫業法の目的は以下のように定められています。
倉庫業法第1条
この法律は、倉庫業の適正な運営を確保し、倉庫の利用者の利益を保護するとともに、倉庫証券の円滑な流通を確保することを目的とする。
(引用:昭和三十一年法律第百二十一号 倉庫業法 第一章 総則 目的)
倉庫業が正しく運営されていないと、倉庫の貸主に有利な契約を強いることも予想され、結果として荷主企業やエンドユーザーである国民に不利益が生じてしまいます。
また、物流業務が円滑に遂行されず商品の流通が滞ってしまうことも考えられるでしょう。
このような事態にならないよう、倉庫業法では倉庫利用者の利益を保護し円滑な流通を実現するためのルールが定められています。
倉庫業法のポイント
倉庫業法では具体的にどのような内容が定められているのでしょうか。
押さえておきたい2つのポイントを紹介します。
登録制であること
冒頭でも紹介した通り、倉庫業は国土交通大臣の行う登録を受けなければなりません。
具体的には、営業倉庫としての約款(契約の条項)を届け出る必要があり、これを行うことなく法律に違反すると「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」が科される場合があります。
また、倉庫業の登録を行っていない企業が、倉庫業を営んでいると誤認させるような広告を出稿した場合も法律違反とみなされ、「50万円以下の罰金」が科される可能性があります。
倉庫業者のリスク
倉庫業法では荷物を保管するうえでの管理責任は倉庫業者が負わなければならないと定めています。
たとえば、倉庫に雨漏りが生じ、荷物が破損・汚損した場合や、何らかの理由によって荷物が紛失した場合などは、倉庫業者に損害賠償責任が問われる可能性があります。
倉庫業は単に荷物の保管スペースを貸し出す業務ではなく、厳しい安全基準をクリアしなければならず、つねにリスクがつきまとう事業ともいえるのです。
営業倉庫と自家用倉庫の違い
一般的に倉庫と聞くと、自社で管理する倉庫設備をイメージする方もいるかもしれません。しかし、このような倉庫は自家用倉庫とよばれ、倉庫業法が管轄する営業倉庫とは明確に区別されます。
自家用倉庫とは、自社の荷物や在庫のみを管理する目的で運用される設備であり、原則として第三者の荷物を保管することはありません。
これに対し営業倉庫とは、第三者である荷主の荷物を預かり、保管するために運用される倉庫のことです。
営業倉庫は自家用倉庫と比較して厳しい要件が求められます。たとえば、耐震性や耐火性はもちろんのこと、雨漏りなどの水濡れ対策や、万が一火災が発生した場合の消火設備なども必須です。
さらに、火災保険への加入も必須とされ、保険料も倉庫事業者が負担しなければなりません。
営業倉庫の種類
一口に営業倉庫といってもさまざまな種類があり、その役割は異なります。
一類倉庫
一類倉庫とは、危険物を含めた一部の荷物を除いてほとんどの荷物を保管できる倉庫です。
その分、倉庫業法が定める設備基準も厳しく、一定以上の耐火性能や防犯設備、鼠害防止設備も備えておかなければなりません。
二類倉庫
二類倉庫とは、一類倉庫よりもわずかに設備基準が緩く、耐火性能が不要な倉庫です。
火災のリスクが低い陶磁器やガラスなどのほか、穀物や飼料、食品などの保管にも適しています。
一方、これらの保管には適切な温度管理や湿度管理が求められ、品質や安全性の高い商品の保管を確保するために重要です。
三類倉庫
三類倉庫とは、二類倉庫よりもさらに要件が緩和された倉庫です。具体的には、防水性能や防湿性能、遮熱性能、耐火性能、鼠害防止性能が不要とされます。
高度な品質管理が難しいため、温度変化や湿度に弱い品目の保管には適していません。
野積倉庫
野積倉庫とは、荷物を屋外で保管するための倉庫です。屋根付きの建物ではなく、周囲を柵や塀などで囲まれたスペースを用意し、消火設備や照明設備を設置しなければなりません。
主に大型の荷物や建設資材、鉱物などを保管する場合に使用されます。
水面倉庫
水面倉庫とは、港湾や河川の水面上で保管する施設であり、「貯木庫」ともよばれます。その名の通り、原木を保管することを目的に運用され、木材の乾燥を防ぐ役割があります。
貯蔵槽倉庫
貯蔵槽倉庫とは、液体や穀物を貯蔵するための倉庫です。
貯蔵槽倉庫は、タンクやサイロといった容器を備え、底面や壁面には十分な強度が求められます。
危険品倉庫
危険品倉庫とは、危険物や化学物質、高圧ガスなどを保管するための倉庫です。
ほかの倉庫とは異なり、消防法や高圧ガス保安法といった法律を遵守する必要があり、保管する品目によっても対象の法律は変わります。
冷蔵倉庫
冷蔵倉庫は、庫内温度が10℃以下に保たれた冷蔵設備を備えた倉庫です。
水産加工品や農畜産物を保管するために運用されており、万が一の事態に備え庫内と外部で連絡を取り合える通信設備を備えておかなければなりません。
トランクルーム
トランクルームとは、個人が所有する物品を保管するための小さな倉庫スペースです。
一般的に、引越しや一時的な保管のニーズに応えるために利用されることが多く、郊外の幹線道路沿いなどに立地しています。
倉庫業法で定められている登録基準
倉庫業を営むにあたって、国土交通大臣への登録を行う際にはどのような基準・要件が求められるのでしょうか。
倉庫業法では以下の3つの要件を定めています。
申請者が欠格に該当しないこと
以下の項目にひとつでも該当した場合、欠格事由としてみなされ登録ができません。
- 申請者が一年以上の懲役又は禁固の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
- 申請者が第二十一条の規定による登録の取消しを受け、その取消しの日から二年を経過しない者であるとき
- 申請者が法人である場合において、その役員が前二号のいずれかに該当する者であるとき
使用する倉庫が施設基準を満たしていること
営業倉庫には数多くの種類が存在しますが、倉庫業法ではそれぞれの種類に応じて耐火性能や防犯設備などの基準が定められています。
これらの基準を満たしていない場合、登録申請を行っても倉庫業者として認められません。
倉庫管理主任者が選任できること
営業倉庫には各倉庫に1名ずつ「倉庫管理主任者」を置かなければなりません。
倉庫管理主任者は以下の4項目のうち1つ以上に該当していることが求められます。
- 倉庫の管理の業務に関して二年以上の指導監督的実務経験を有する者
- 倉庫の管理の業務に関して三年以上の実務経験を有する者
- 国土交通大臣の定める倉庫の管理に関する講習を修了した者
- 国土交通大臣が第一号から前号までに掲げる者と同等以上の知識及び能力を有すると認める者
倉庫業法で違反となる対象と違反事例
倉庫業法で違法性が問われるのはどういった場合なのか、違反事例についても解説しましょう。
未登録のまま倉庫業の営業を行う行為
倉庫業法では国土交通大臣の登録を受ける必要があると紹介しましたが、これを行わないまま営業した場合、違法性が問われます。
未登録の営業で違法性が認められた場合、「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」または両方の罰則が科されることがあります。
名義貸し・名義借り
自分以外の人に倉庫業者としての名義を貸し、自分に代わって営業をしてもらう行為や、ほかの人から名義を借りて営業を行う行為も違法性が問われる可能性があります。
これらの行為は実質的に未登録のまま倉庫業の営業を行う行為と変わらず、上記と同様に「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」または両方の罰則が科されることがあります。
営業停止命令の無視
倉庫業法で定められているルールに違反した場合、国土交通省から「営業停止命令」や「免許の取り消し」といった処分が下る場合があります。
これらの命令を無視して倉庫業の営業を続けた場合、罰則の対象になる可能性があります。
違反時の罰則としては、「6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」、または両方の罰則が科されることも考えられるでしょう。
安全在庫の計算方法や間違いやすい言葉との違いを紹介|リスクについても解説
倉庫運営を委託するメリット
ここまで紹介した内容はあくまでも倉庫業法が管轄する営業倉庫に関するルールであり、自社が管理する自家用倉庫であれば厳しいルールはありません。
しかし、自社で倉庫を運用していくとなると多くの手間と時間を要し、物流の専門的なノウハウがない事業者にとっては極めてハードルの高い問題です。
そこで荷主企業にとっておすすめなのが、倉庫業を営業している専門の事業者に倉庫運営を委託することです。
自社物流に関するノウハウや知見がない事業者でも、専門の業者にアウトソーシングすることで高度な物流管理が実現でき、物流品質の向上につながります。
OTSはアパレル・ファッション・ジュエリーに特化した物流アウトソーシング専門会社
物流倉庫の運営は、取り扱う荷物や製品の種類によって高度な専門性とノウハウが求められます。
たとえば、アパレル製品やファッション小物などの場合、適切な湿度管理ができていないとカビが発生することもあり、大きな損失を生んでしまいます。また、倉庫内の衛生環境が整っていないと虫やネズミなどによる被害が生じることもあるでしょう。
これらの被害を防ぐためにも、適切な設備の整った倉庫を選ぶことが重要です。
OTSはアパレルやファッション、ジュエリーなどの商材に特化した物流アウトソーシングの専門会社であり、適切な倉庫運営の受託や倉庫選びのアドバイス、コンサルティングも提供しています。
まとめ
倉庫業とは、荷主の荷物を預かり、倉庫で保管するビジネスモデルを指し、このような業態の倉庫を営業倉庫とよびます。
営業倉庫の運営にあたっては、倉庫業法で定められたルールを把握し、違反がないようにしなければなりません。
また、倉庫業は誰でも運営できるものではなく、国土交通大臣への登録を済ませておかなければならず、未登録のまま営業をすると罰則の対象となることもあります。
信頼できる倉庫業者を選びたい方や、倉庫運営そのものを委託し物流業務を効率化したいという方は、物流アウトソーシングの専門会社に相談してみるのもおすすめです。
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