安全在庫の計算方法や間違いやすい言葉との違いを紹介|リスクについても解説
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最終更新日:2023/05/17
ファッション物流
商品を製造するメーカーや小売事業者にとって、在庫に関するリスクは常に頭を悩ませる問題のひとつです。
在庫が少なすぎると販売機会の損失につながり、反対に在庫が多すぎると不良在庫として経営を圧迫する原因にもなりかねません。
このようなリスクを少しでも低減するための指標として、安全在庫というものがあります。
本記事では、なぜ安全在庫を確保することが重要なのか、その理由や目的を紹介するとともに、安全在庫を設定するメリットやデメリット、間違いやすいその他の指標との違いについても詳しく解説します。
Contents
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安全在庫とは
安全在庫とは、需要の変動やメーカーからの入荷遅れなどの事態に備え、自社で保有しておくべき最低限の在庫量を指します。
安全在庫の量を算出するためには、需要予測やリードタイム(受注から納品までの時間)の分析などを行ったうえで、総合的なリスクやコストなどを考慮して決定することが一般的です。
また、安全在庫の量や基準は取り扱う商材や業界によっても異なるため、各社が独自に最適な在庫レベルを見極めることが求められます。
安全在庫の目的
安全在庫の目的を一言で表すと、欠品を防ぎ顧客に対して安定的な製品やサービスの提供を行うことです。
具体的には、需要が急増した場合や、仕入れ先からの納品が遅れた場合にも商品を提供できるよう、あらかじめ一定量の在庫を確保しておくことです。
しかし、これだけを聞くと、「安全在庫を設定しなくてもできるだけ多くの在庫量を確保しておけば解決するのではないか?」と感じる方もいると思います。
過剰な在庫数を確保することは、保管コストや管理コストが増大するだけでなく、大量の売れ残りも生じさせ赤字を招くこともあるのです。
事業者にとって損失を生じさせないためにも、自社にとっての適切な在庫量を見極め、安全在庫を確保しておくことは重要です。
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安全在庫のメリット・デメリット
安全在庫を維持することは、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
また、反対にデメリットとして考えられることも紹介しましょう。
メリット
安全在庫を維持するメリットは主に以下の3点です。
保管コストや管理コストの削減
安全在庫を維持するということは、販売数量の予測に応じて適正量を維持することでもあります。
過剰在庫に陥ることなく、販売見込みの高い数量を在庫として確保できるため、不良在庫が減り保管コストや管理コストの削減につながります。
販売機会の損失を防ぐ
店舗やECサイトへ訪れる顧客の多くは、その場ですぐにでも商品が欲しいと考えています。
安全在庫がつねに維持できていれば、顧客の需要を満たすだけの適正な在庫量が確保され、販売機会の損失を防ぐことにもつながるでしょう。
財務状況の適正化
長期間売れ残ったままの不良在庫があっても、帳簿上は自社の財産であり、ただちに損失が生まれるわけではありません。
しかし、モノとして残っていても、それが売れない限りは現金へ換えることができず、キャッシュフローが悪化してしまいます。
安全在庫を維持するということはキャッシュフローの改善にもつながり、企業にとっては財務状況を適正化できるメリットもあるのです。
デメリット
安全在庫の維持は決してメリットばかりとは限らず、デメリットとして考えられることもあります。
安全在庫量の算出が難しい
安全在庫量は安全係数や標準偏差、リードタイムなどさまざまな係数を使用して算出されます。
計算方法はこの後の章で詳しく解説しますが、複雑な計算式に当てはめて算出しなければならず手間がかかります。
過剰在庫や欠品が生じるリスクはゼロではない
安全在庫はあくまでも需要が一定的で、大きな変動がないことを前提に算出されるものです。
そのため、例外的な需要の変動があった場合、過剰在庫や欠品が生じるリスクがあります。
例外的な需要の変動が起こる理由の一例としては、近隣でイベントが実施されている日や、大規模災害が発生した場合などが想定されます。
安全在庫と間違いやすい言葉との違い
在庫数を表す指標にはさまざまなものがあり、安全在庫と混同しやすいものも少なくありません。
特に間違いやすい言葉と、それぞれの違いについて詳しく紹介しましょう。
適正在庫(基準在庫)との違い
適正在庫とは基準在庫ともよばれ、需要量の平均値や予測値などを考慮した最適な在庫量のことを指します。
安全在庫は商品の欠品を防ぐために最低限維持しておくべき在庫量を設定しますが、適正在庫は自社の売上や利益を最大化することを目的として用いられる指標です。
流動在庫との違い
流動在庫とは、販売計画に基づき一定期間内で流通する見込みのある在庫量のことを指します。
これに対し安全在庫は需要変動に対するリスクを考慮した在庫であり、流動在庫に加えて最低限必要な在庫量を指します。
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発注点との違い
発注点とは、在庫が一定の数量を下回った場合に発注を行うポイントのことを指します。
どのポイントを発注点とするかは事業者によってさまざまであり、安全在庫がそのラインとなることもあります。
安全在庫を管理しないとどんなリスクがある?
保管コストや管理コストを極限まで減らそうとして在庫数を極端に絞ってしまうと、顧客が欲しい商品が残っておらず、販売機会を失うことにもつながります。
その場で欲しい商品がなければ他店に回ってしまったり、極端に在庫数が少ないと「欲しい商品が買えない」、「品揃えが悪い」といったネガティブな印象を与えてしまい、顧客を失ってしまうこともあるでしょう。
このように、安全在庫を設定せず適正な在庫管理ができていないと、販売機会の損失によって売上の低迷や利益率の低下を招くおそれがあるのです。
安全在庫の計算方法
安全在庫量の算出にあたっては、以下の計算式に各指標を当てはめて計算します。
安全係数×標準偏差×√(発注リードタイム+発注間隔)
上記の数式を見ただけでは、各指標が何を指しているのか分からないという方も多いでしょう。
そこで、安全在庫の算出に不可欠な各指標の割り出し方を紹介します。
安全係数の計算方法
安全係数とは、どの程度の欠品であれば許容できるのか、その割合を示す指標です。
許容率がそのまま指標となるのではなく、以下の表に沿って安全係数を割り出します。
欠品許容率 | 安全係数 |
0.1% | 3.10 |
1% | 2.33 |
2% | 2.06 |
5% | 1.65 |
10% | 1.29 |
20% | 0.85 |
30% | 0.53 |
どの程度の許容率で設定するのかは各事業者の判断に委ねられますが、一般的には5%の許容率、すなわち安全係数1.65をもとに算出することが多いようです。
標準偏差の計算方法
標準偏差とは、製品ごとの需要の差を示す指標のことを指し、以下の手順に当てはめて算出します。
- 製品ごとの日々の出荷量平均値を割り出す
- (日別の出荷量-平均値)を二乗
- 2の合計÷日数
- 3の値の平方根=標準偏差
標準偏差の算出には手間がかかりますが、Excelの関数「STDE関数」を使用することで自動化が可能です。
STDEV(A1:A10)
上記の「(A1:A10)」の値を標準偏差を求めたい範囲に指定することで瞬時に計算できます。
リードタイムの計算方法
リードタイムは、発注が完了してから配送先へ到着するまでの時間を示す「発注リードタイム」と、次回の発注までの間隔を指す「発注間隔」を使って算出します。
√(発注リードタイム+発注間隔)
たとえば、発注リードタイム、発注間隔ともに5日間であれば、3.162(10の平方根)がリードタイムとなります。
安全在庫量の算出方法
上記で説明した安全係数と標準偏差、リードタイムの指標をもとに、あらためて安全在庫の計算式に当てはめて算出してみましょう。
安全係数×標準偏差×√(発注リードタイム+発注間隔)
たとえば、欠品許容率を5%とし、標準偏差が3.0、発注リードタイム、発注間隔ともに5日間とした場合には、以下の数式となり安全在庫数は15.6個と算出されます。
1.65×3.0×√(5+5)
安全在庫と在庫管理のバランス
安全在庫を設定することは欠品リスクを最小限に留めるうえで有効な対策です。
しかし、たとえば欠品許容率を極端に低く設定したり、すべての商品に対して安全在庫を設定したりすると、トータルで見たときに安全在庫の数が増加し過剰在庫に陥る可能性があるでしょう。
結果として、安全在庫を設定したばかりに保管コストや管理コストが増大するというリスクもあるのです。
このような事態を防ぐためにも、売れ筋の商品など欠品を出してはいけないものに対してのみ安全在庫を設定しておくなど、メリハリのある在庫管理を心がけることが大切です。
また、そもそも安全在庫は欠品を完全に防ぐものではなく、リスクを抑えるための指標に過ぎません。
安全在庫は在庫管理を適正化するための参考程度に留めておき、適正在庫や流動在庫もうまく組み合わせながら管理していくことが求められます。
OTSはアパレル・ファッション・ジュエリーに特化した物流アウトソーシング専門会社
実店舗を経営している事業者はもちろんですが、自社のECサイトを運営したり、ECサイトへ出店している事業者にとっても安全在庫の設定は重要です。
しかし、取り扱う商材によってはどの程度の在庫を確保しておけば良いか、判断に迷うことも多いでしょう。
特に、アパレルやファッション、ジュエリーといった商材はトレンドの移り変わりが早い特徴があります。
欠品を防ぐために安全在庫を確保していても、逆に不良在庫として倉庫に溜まっていくリスクが大きい商材ともいえるでしょう。
このような在庫リスクを最小限に留めるためには、アパレルやファッション、ジュエリーに特化した物流アウトソーシングの専門会社へ相談してみるのもひとつの方法です。
OTSでは数多くのEC事業者に対し物流業務のアウトソーシングやコンサルティングを提供しており、安全在庫の設定や適正な在庫管理のノウハウも数多くあります。
保管コストや管理コストを削減したい企業、販売機会の損失を最小限に抑えたい企業はもちろんのこと、安全在庫を設定しているものの欠品が頻繁に発生して困っている企業に対しても有効なアドバイスを提供できます。
まとめ
安全在庫を設定する目的は、商品の欠品を防ぎ、顧客に対して安定的な製品やサービスの提供を行うことです。
安全在庫を適切に設定することにより、販売機会の損失を最小限に抑え、売上の拡大や顧客満足度の向上にも貢献できるでしょう。
一方で、在庫管理の指標には適正在庫や流動在庫といったものもあります。
安全在庫にばかり気を取られてしまうと、全体で見たときに過剰在庫に陥ってしまうことも考えられるため、適正在庫や流動在庫とのバランスも考えて在庫量を設定する必要があるのです。
安全在庫の計算方法は上記で紹介した通りですが、これだけを見ても自社に適した安全係数がわからなかったり、標準偏差やリードタイムの算出が難しいと感じる方もいるでしょう。
そのような場合には、物流アウトソーシングの専門会社へご相談いただき、自社にとって最適な安全在庫を設定することも検討してみてください。

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