3PL(サードパーティロジスティクス)とは?物流業界でのメリットを解説
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最終更新日:2023/06/07
ファッション物流
物流業界では近年、3PLという概念が注目されています。サードパーティロジスティクスともよばれるこの概念は、一般的な物流のアウトソーシングとどのような違いがあるのでしょうか。
本記事では、3PLの基本を紹介するとともに、荷主企業が導入するメリットとデメリット、導入事例などもあわせて紹介します。
Contents
3PL(サードパーティロジスティクス)とは
3PLとはサードパーティロジスティクスともよばれ、物流の専門業者が荷主である企業や店舗に対しさまざまな提案を行い、物流業務の一部を受託することを指します。
単に物流業務をアウトソーシングするのではなく、物流企業から荷主に対し能動的に提案することが特徴として挙げられ、荷主企業が抱える物流業務の問題や課題を解決に導きます。
3PLが注目されている背景・理由
物流業界では近年、3PLの概念が注目されていますが、その背景には以下の理由が挙げられます。
人手不足の深刻化
日本では多くの業種・企業で人手不足が深刻化しています。特に物流業界の人手不足は一層深刻で、求人情報を公開しても候補者が集まらないことも珍しくありません。
自社物流の体制を一から構築するのが難しいことから、3PLを活用し外部リソースに頼る企業が増えています。
人件費や物価の高騰
物流業務を担う人材を採用できたとしても、人件費の高騰によって自社の利益を圧迫するケースも少なくありません。また、さまざまな品目の物価が上昇している昨今、梱包資材や燃料費などのコストが経営を圧迫するケースもあります。
このような経費を最適化し、最小限のコストで物流業務を行うためにも3PLが注目されています。
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求められるサービスレベルの高度化
Eコマースの需要増加により、時間指定配達や流通加工など求められるサービスレベルは高度化しています。
従来の自社物流では細かなニーズに対応しきれなくなり、3PLに頼る荷主企業が少なくありません。
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4PLや倉庫業との違い
3PLと似た概念に4PLや倉庫業などがあります。それぞれ何が違うのか詳しく解説しましょう。
3PLと4PLの違い
3PLは、物流業務の一部を外部の専門業者にアウトソーシングする形態です。具体的には、輸送、倉庫管理、貨物管理といった物流のオペレーション業務を担当するのが3PLにあたります。
これに対し、4PLは3PLに比べて包括的な業務も担います。たとえば、サプライチェーンの設計や最適化、物流業者の選定や管理、物流データの分析・活用のアドバイスなどが4PLにあたります。
3PLと倉庫業の違い
倉庫業とはその名の通り、物流拠点となる倉庫を管理・運営する業態を指します。在庫の入庫作業や在庫管理などに特化しており、輸送や配送に関わる業務には直接的に関与しないのが一般的です。
これに対し3PLは、物流オペレーションにかかわる業務を全般的に担うという違いがあります。
3PLのアセット型・ノンアセット型とは
3PLを提供している事業者のなかには、大きく分けてアセット型とノンアセット型という2種類が存在します。
アセット型
アセット型とは、物流業務に必要なリソースや資産を自社で所有・運営している事業者のことです。
具体的には、倉庫施設や輸送車両(トラック、船舶、飛行機など)、物流設備(フォークリフト、パレットなど)が挙げられます。
自社のリソースを持つことにより、柔軟性の高い独自の物流サービスを提供できる一方、管理やメンテナンスの手間がかかるという側面もあります。
ノンアセット型
ノンアセット型とは、アセット型と対照的に自社のリソースや資産を所有せず、外部のリソースを活用して物流サービスを提供する事業者のことです。
倉庫施設や輸送車両は他社のリソースをレンタル・リースすることによって運営されます。ノンアセット型の3PLは、管理やメンテナンスの手間を最小限に抑えられるほか、事業規模に応じて柔軟なスケーラビリティに対応できるメリットがあります。
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3PLを導入するメリット・デメリット
3PLの導入にあたっては、メリットばかりではなくデメリットも存在することを念頭に置かなければなりません。
それぞれのポイントを比較してみましょう。
メリット
3PLの導入メリットは以下の3点です。
コストの削減と業務効率化
燃料費や人件費の高騰、物価の上昇により、物流に関連するコストは年々上昇しています。
自社物流の体制を構築するとなると膨大なコストと人員が必要ですが、3PLを利用することで倉庫をはじめとした設備投資や輸送手段を最適化し、最小限のコストで物流業務を遂行できます。
柔軟性の高い物流体制の維持
3PLを利用することにより、荷主企業は需要の変動に柔軟に対応できるメリットもあります。
リソースの拡張や縮小に迅速に対応できることで、企業は需要変動に対してリスクを最小限に抑えることができます。
物流業務の品質向上
3PLを導入することで物流業者の高度なノウハウや知見、情報技術を活用でき、物流業務の品質向上に貢献します。
たとえば、リアルタイムでの在庫状況や輸送状況の追跡、データ分析などが可能となり、サプライチェーン全体の管理が容易になるでしょう。
デメリット
3PLの導入デメリットとして考えられるのは以下の2点です。
物流品質が3PL事業者に依存してしまう
物流業務を3PL業者に任せきりになってしまうと、万が一何らかの理由によって3PL業者が事業継続が困難になった場合や、サービス品質が低下した場合などにおいて、その影響を受けやすくなります。
カスタマイズの制限
3PLにおいて、流通加工やギフトラッピングなど特殊な物流業務に対応するためのカスタマイズが必要な場合、それに応じてコストが上昇する可能性があります。また、3PL業者によっては、そのような特殊な要求に対応できない場合もあります。
3PLの導入事例
3PLの導入によって物流業務の改革に成功した事例をいくつか紹介しましょう。
大型物流センターの業務を一括委託
大手文具メーカーでは、BCP対策の一環として新たに大型物流センターを設置し、物流業務の分散化を決めました。
センター内で行われる荷受けや検品、仕分け、ピッキング、梱包などの物流業務を3PLとして委託し、WMS(倉庫管理システム)を活用しながら業務効率化に成功しています。
新たに物流拠点を構築したことにより、災害時でも安定した製品の供給体制を実現でき、スタッフの業務負担解消にも貢献できています。
ネット通販の需要増加に対応するため3PLを活用
ネット通販事業を手掛けるある企業では、急激な需要増加によって自社物流体制では業務をカバーしきれなくなっていました。
そこで、倉庫内作業の運営を3PL業者へ委託したことで物流業務が最適化され、トータルの物流コスト削減にも成功しています。
将来的に取り扱い品目の数が増えた場合でもオペレーションに対応できるようになりました。
3PLを導入すべき事業者の特徴
3PLを導入したほうが良い荷主企業はどのような特徴があるのでしょうか。
小規模・中規模企業
物流に関する専門的な知識やリソースを持たない小規模・中規模企業は、3PLを導入することで物流プロセスの効率化やコスト削減を実現できるでしょう。
事業立ち上げ直後または成長中の企業
事業を立ち上げたばかりの企業や、成長過程にある企業は需要の変動が起こりやすいものです。
売上規模が小さいからこそ、わずかな需要変動にも対応しきれないことがあります。3PLを導入することで需要の変動に柔軟に対応でき、スケーラブルな物流ソリューションを実現できます。
物流コストの削減を目指す企業
物流コストは企業にとって経営状態を左右する重要な項目のひとつです。
物流コストの削減は経営の効率化にも直結することから、3PLの導入によって効率的かつコストパフォーマンスの高い物流ソリューションを実現できます。
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3PLの導入にかかる費用
3PLにかかる費用は荷物の量や保管場所の広さ、立地などによっても大きく変わってきます。
主な内訳としては以下の通りです。
- システム利用料(3~10万/月)
- 倉庫保管料(月額4,000〜10,000円/坪)
- 入庫・検品料(10〜150円/個)
- ピッキング料(10〜150円/個)
- 梱包料(費)(100円〜/個)
- 配送料(費)(500円〜/個)
上記はあくまでも一例であり、取り扱う荷物の量や品目によっては月額数千万円単位のコストがかかることもあります。
また、3PL業者によっては上記の内訳以外の費用が請求されることもあるため、事前に見積もりを取得しておきましょう。
3PLを導入する際の注意点
3PLは物流業務の最適化・効率化のために有効な手段といえますが、導入にあたっては注意すべきポイントも存在します。
解決すべき課題や問題の明確化
物流業務でどういった課題や問題を抱えているのか、3PLの導入によって何を解決したいのかを明確にしておくことです。
たとえば、誤配送や配送の遅延によって顧客からのクレームが頻発しているという課題を抱えていた場合、その原因を深掘りし「人手不足」や「物流ノウハウの不足」など考えられる項目を挙げてみましょう。
原因が明確になっていれば、3PLによって何に取り組めば良いのかが把握でき問題解決に近づきます。
自社が扱う商品の種類
配送する品目によっても物流業務のノウハウは異なることから、物流で取り扱う荷物の品目や種類を把握しておくことも重要なポイントです。
たとえば、厳密な温度・湿度管理が求められる商品や、複雑な流通加工の作業が求められる商品の場合、それらのノウハウをもった業者を選定しなければなりません。
3PLの業者を選ぶ際のポイント
3PLを提供している業者は数多く存在し、どこを選べば良いのか分からないという方も多いでしょう。
信頼性や実績
3PL業者の信頼性や経験、専門知識、業務対応能力は極めて重要な要素となります。
ホームページや自社サイトにはこれまでの実績や対応業務の一例が紹介されているところも多いため、それらの情報を参考にすることで信頼性の高い実績豊富な3PL業者を見つけられるでしょう。
契約内容が明瞭でわかりやすいか
3PL業者によっても費用の明細や内訳は異なります。しかし、どのような内容であったとしても、契約内容や料金の内訳が明瞭で分かりやすく、納得のいく説明をしてくれる事業者を選ぶことが大切です。
もし分かりにくい内容があれば、打ち合わせやヒアリングの際に納得が得られるまで担当者へ質問してみましょう。
情報管理の体制と管理システム
3PLを導入する大きな目的のひとつに、自社物流では難しい物流業務の効率化や最適化が挙げられます。これを解決するために、倉庫管理システムや在庫管理システムといったツールを採用している業者も少なくありません。
また、物流業務を委託するということは自社の営業情報や機密情報の一部を扱うことにもなるため、情報管理の体制が万全で安心して委託できる業者を探すことも大切です。
3PLの物流におけるアパレル・ファッション業界の活かし方
3PLはあらゆる業界の物流業務を効率化・最適化するための手段ではありますが、なかでもおすすめなのがアパレルやファッション業界での活用です。
アパレル製品やファッション小物は、同じ品目でも複数のカラーバリエーションやサイズが展開されており、在庫管理が煩雑化しがちです。
カラーバリエーションとサイズの組み合わせによっては、1つの品目で数十種類の在庫を管理しなくてはならず、取り扱い品目が少ない小売業者にとっても大きな負担となります。
また、アパレル製品やファッション小物は商品のタグ付けやネーム刺繍、裾上げ、ボタン補修などの流通加工業務もあります。
これら全てを自社物流として行うには多くの時間とコスト、スタッフが必要となることから、3PLを導入することで負担軽減につながります。
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アパレルやファッション物流における3PLは、専門的なスキルやノウハウ、経験が求められます。しかし、身近にそのような業務に対応できる3PL業者が見つからず、困っている方も多いでしょう。
そのような場合には、ぜひ一度OTSへご相談ください。長年にわたってアパレル・ファッション物流をサポートしてきた実績があり、複雑な在庫管理や幅広い流通加工にも対応できるノウハウがあります。
まとめ
今回紹介してきたように、物流業務の効率化を実現するためにも3PLは有効な手段のひとつです。ただし、3PLに依存しすぎてしまうと、自社物流の体制を構築しようと考えたときに対応しきれなくなってしまうデメリットもあります。
自社の物流業務を改革し省人化・効率化を実現したいという企業は、3PLのメリット・デメリットを踏まえながら信頼できる業者へ相談してみることが大切です。

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