在庫管理における適正在庫の計算方法や維持のポイントを解説
商品をより多くのユーザーの手元に届けるとともに、自社の利益を最大化するためにも、適正在庫を維持することは重要な取り組みのひとつです。
しかし、そもそも自社にとっての適正在庫はどの程度なのか、正確に把握できていないケースも少なくありません。
そこで本記事では、適正在庫の計算方法や適正在庫を維持するためのポイント、基本的な方法もあわせて解説します。
Contents
適正在庫とは
適正在庫とはその名の通り、その企業や店舗にとって適正量の在庫を指します。
適正量とは、商品が欠品することなく、過剰在庫にもならない在庫数のことです。
当然のことながら、店舗の規模や来客数、売上規模によっても適正在庫は異なります。
たとえば、個人で経営しているような小規模店舗では、Tシャツ10枚が適正在庫であったとしても、大型ショッピングモールにテナントとして入っている店舗や、ロードサイドに立地した大型店舗などの適正在庫は30着、50着というケースもあります。
また、店舗や売上の規模だけでなく、取り扱う商品の特性や単価などによっても適正在庫は変わってくるでしょう。
アパレルショップの場合、インナーや靴下などは季節を問わず売上が安定しますが、コートやマフラー、ブーツといったアイテムはシーズンが過ぎると売れなくなるため、時期やタイミングを考慮して適正在庫を計算する必要があります。
適正在庫の維持が必要な理由・重要性とは
そもそも、なぜ適正在庫を維持することが店舗にとって重要なのでしょうか。
適正在庫を維持するということは、見方を変えれば欠品と過剰在庫を防ぐことでもあります。
欠品または過剰在庫が生じるリスクを理解することで、適正在庫を維持する重要性が見えてきます。
販売機会の損失を防ぎ売上につなげる
商品が欠品していたとしても、その都度メーカーや卸売業者から取り寄せれば良いのではないか、と考える方もいるでしょう。
しかし、ユーザーの多くはすぐにでも商品を購入したいと考えています。
もし、在庫がないと聞くと「ほかの店舗に行けばあるかもしれない」と考え、お店を後にするユーザーも少なくありません。
販売店にとっては販売機会の損失につながり、欠品商品があまりにも多いと「品揃えの悪いお店」というレッテルを貼られてしまい、売上の低下を招くおそれがあります。
そのため、販売機会の損失を防ぎ売上を向上させるためにも適正在庫を維持することは重要なのです。
在庫管理のコストを削減する
販売機会の損失を防ぐのであれば、あらかじめ大量の在庫を確保しておけば良いのではないか、と考える方もいるでしょう。
しかし、このような方法をとった場合、在庫管理にかかるコストの問題が生じます。
あまりにも大量の在庫を抱えてしまうと、それを保管しておくための倉庫を確保しておかなければなりません。
必要以上の賃料が発生するほか、棚卸業務も膨大になり多額の人件費を支払わなくてはならないでしょう。
在庫は多ければ多いほど良いというものではなく、あくまでも適正在庫を維持することが重要といえるのです。
在庫の欠品または過剰在庫が生じる原因
多くの物流現場で適正在庫の維持は共通の課題となっています。
そもそもなぜ、在庫の欠品または過剰在庫が生じてしまうのでしょうか。
それぞれ考えられる原因を解説します。
在庫の欠品が生じる原因
欠品が生じる主な原因として挙げられるのは、在庫情報が適切に管理されていないことです。
特に重要なのが、帳簿やシステム上で管理している在庫情報と、実際の在庫数を一致させる情物一致です。
売上や在庫の記録作業を忘れていたり、後回しにしていたりすると在庫情報と実際の在庫数が一致せず、欠品が生じやすくなります。
また、在庫を保管している倉庫やバックヤードの整理が行き届いておらず、商品が散乱した状態になっているとひと目で在庫状況が分かりにくく、欠品が生じることもあるでしょう。
過剰在庫が生じる原因
過剰在庫が生じる原因としては、上記でも紹介した在庫管理もひとつに挙げられますが、それ以外にも需要予測の難しさがあります。
たとえば、アパレルやファッション製品の場合、コートやマフラー、ブーツなどは秋から冬にかけて需要が急増します。また、アパレル業界はトレンドの入れ替わりが激しく、1シーズン前の商品が次のシーズンも確実に売れるとは限りません。
人気商品だからといって需要予測を誤ってしまうと、想定よりも売れ行きが悪く過剰在庫を生むこともあるのです。
適正在庫の計算方法
適正在庫を算出するためには、いくつかの計算方法があります。
代表的な計算方法をいくつか紹介しましょう。
安全在庫+サイクル在庫
適正在庫の計算として特にベーシックなのが、安全在庫にサイクル在庫を加算する方法です。
まず、安全在庫とは多少の需要変動があったとしても対応できる在庫量のことであり、以下の式に当てはめて計算します。
安全係数(1.65)×使用量の標準偏差×√発注リードタイム+発注間隔
上記のうち、「使用量の標準偏差」とはこれまでの販売量の平均値にあたります。
これに対しサイクル在庫とは、発注サイクルの中間点で消費が想定される量のことを指します。
たとえば、10日ごとに20個を発注している場合には、5日が経過した時点での平均的な消費量がサイクル在庫にあたります。
在庫回転率と在庫回転期間
在庫回転率と在庫回転期間をもとに適正在庫をチェックする方法もあります。
在庫回転率=年間売上高÷平均在庫高
在庫回転期間=棚卸資産合計÷年間売上高
たとえば、年間売上高が5,000万円で平均在庫高が1,000万円の場合、在庫回転率は5回という計算になります。
一方、棚卸資産合計額が3,000万円で年間売上高が2,000万円の場合、約1年半の回転期間で在庫が入れ替わった計算になります。
一般的に在庫回転率が高く、反対に在庫回転期間の値が小さいほど適正在庫が維持できているといえます。
交叉比率
交叉(こうさ)とは、店舗の利益・儲けを表す際に用いられる指標であり、特に小売業においては適正在庫の計算に交叉比率が採用されることが多いです。
交叉比率は以下の計算式に当てはめて算出します。
交叉比率=在庫回転率×粗利益率
上記のうち、粗利益率とは粗利益を売上高で割った数値にあたります。
上記で算出した交叉比率をもとに適正在庫の金額を割り出すためには、以下の計算式に当てはめます。
適正在庫金額=売上目標÷在庫回転率
適正在庫を維持する方法やポイント
適正在庫を維持することは決して簡単なことではなく、物流業務の豊富な経験やノウハウ、知見が求められます。
決して一朝一夕で実現できるものではありませんが、特に注意しておきたいポイントや基本的な方法を紹介しましょう。
適正在庫の算出方法を統一
まずは自社にとっての適正在庫を把握し、全社で認識を共有しておきましょう。
取り扱う商材や事業規模、店舗数などによっても適正在庫は異なります。
また、上記でも紹介した通り適正在庫の算出にはさまざまな方法があります。
各店舗、事業部などによって適正在庫の算出方法やルールが異なると、管理方法も曖昧になってしまうでしょう。
このような事態を防ぐためにも、適正在庫の算出方法は全社で統一しておくことが重要です。
発注方法の見直し
在庫を発注する際の方式を見直すことも重要です。
発注方法には大きく分けて定期発注方式と定量発注方式の2種類があります。
需要が変動しやすい商品や単価の高い商品を発注する際には、一般的に定期発注方式が適しているといわれます。
これに対し、需要が比較的安定していて単価も安い商品を発注する際には定量発注方式が適しているとされます。
需要予測の実施
より精度の高い適正在庫を維持していくためには、需要予測を実施することも重要です。
過去の同時期における商品の売れ行きや傾向はどうだったのか、市場全体のデータなども大いに参考になるでしょう。
もし、自社のデータや公表されている市場データだけで分析が難しい場合には、商品を製造しているメーカーやクライアントに意見を求めることも効果的です。
リードタイムの短縮
製品を製造するメーカー側において適正在庫を維持するポイントとしては、製造リードタイムを短縮することが挙げられます。
リードタイムをできるだけ短くすることができれば、製品を出荷するまで在庫として保管しておく期間も短くなり適正在庫が維持しやすくなるでしょう。
OTSはアパレル・ファッション・ジュエリーに特化した物流アウトソーシング専門会社
数ある製品のなかでも、アパレルやファッション製品、ジュエリーなどは品数も多く、適正在庫を維持する難易度は高い傾向にあります。
たとえば、Tシャツ1枚を例にとっても複数のサイズがあり、カラーバリエーションも多岐にわたります。
これまでの販売動向や店舗を訪れる客層などをもとに需要予測を立てておかないと、過剰在庫や欠品が相次ぐリスクもあるでしょう。
しかし、物流業務のノウハウがない企業・店舗にとって、アパレルやファッション製品、ジュエリーなどの適正在庫を計算するのは至難の業です。
もしこういった課題を抱えている場合には、物流アウトソーシング専門会社へ業務を委託してみるのもひとつの方法です。
OTSは35年以上にわたって、多くの企業に対しアパレル物流を支援してきた実績があり、精度の高い適正在庫の算出も可能です。
まとめ
欠品も過剰在庫も防ぎつつ、適正在庫を維持することは決して簡単ではありません。
特に物流業務のノウハウや経験がない企業にとっては、どのように適正在庫を計算すれば良いのか分からないケースも多いでしょう。
今回紹介した適正在庫の計算方法はあくまでも代表的なものであり、取り扱う商材や業種、物流規模、需要によっても正確な数値は異なります。
まずは自社で適正在庫の算出方法を統一し、発注方法の見直しや需要予測を行うなど、具体的な対策・方法を立てて取り組んでみましょう。
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