物流業界における市場規模の動向や今後はどうなる?現状の課題と共に解説
公開日:
:
最終更新日:2023/04/26
ファッション物流
2020年以降、コロナ禍によって大幅な減収・減益となった企業も多く、さらに2022年には世界情勢の緊迫化もあって不安定な時代を迎えています。
特に物流業界は原油価格をはじめとした物価の高騰がダイレクトに影響しやすいことから、今後の市場規模はどうなるのか不安に感じている方も多いでしょう。
そこで本記事では、物流業界におけるこれまでの市場規模を詳しく解説するとともに、今後予想される動向、業界全体が抱える課題と解決に向けて必要なことなども紹介します。
Contents
これまでの物流業界の市場規模の推移
物流業は企業の経営を支える屋台骨ともいえます。
メーカーは自社で製造した製品を卸会社や店舗へ輸送し、店舗は商品の仕入れや通販による配送のために物流会社へ依頼します。
そのため、物流業界の市場規模を見ることで、経済の大まかな動向を知ることにもなるのです。
物流業界における売上と聞くと、私たちは宅配便などで支払う送料をイメージしがちです。
しかし、対法人向けの物流サービスでは、輸送そのものにかかるコストに加えて、在庫を倉庫に保管しておくためのコストや荷物の積み下ろしにかかる荷役料、商品にタグを付けたり梱包や包装をしたりする流通加工などのコストもあります。
物流業界の市場規模を把握するためには、これらのコストもトータルで算出する必要があります。
矢野経済研究所は2022年5月25日、物流事業者の売上高をもとに、これまでの市場規模の推移と今後の予測値を発表しました。
それによると、2020年度までの市場規模は以下のように推移してきたことが分かります。
- 2017年度:21兆5,350億円
- 2018年度:21兆1,590億円
- 2019年度:20兆5,400億円
- 2020年度:20兆405億円
2019年度に21兆円のラインを切り、2020年度には約5,000億円のマイナスを記録しました。
この背景には、コロナ禍によって企業活動が低迷し、大口の取引先からの依頼が減少したことなどが挙げられます。
しかし、2021年度以降は一転して21兆円台を回復し、その後2022年度には22兆円と市場規模は拡大していくことが見込まれています。
参考:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2990#
物流の2024年問題を簡単解説|働き方関連改革法が物流業界に与える影響
今後の物流業界の市場規模が拡大する理由
これまで4年以上にわたって下落傾向にあった物流業界の市場規模が、なぜ今後は拡大に転じると予想されているのでしょうか。
その背景には、主に以下の3つの要因が考えられます。
ネット通販の需要拡大
コロナ禍によって私たちの生活様式は大きく様変わりし、自宅で過ごすというライフスタイルが定着しつつあります。
食事はスマホアプリひとつでオンラインでオーダーできるほか、ショッピングもネット通販さえあればたいていのものは手に入ります。
以前からネット通販の需要は高まっていましたが、コロナ禍によって一層拍車がかかった格好です。
すでに感染症の脅威は落ち着きつつありますが、コロナ禍以前のような生活様式に完全に戻るとは限りません。
特にネット通販はスマホひとつで手軽にオーダーでき、価格・品揃えともに実店舗よりも優位性が高いことから、今後さらに需要は拡大していくと考えられます。
コロナ禍からの回復にともなうBtoB物流の需要拡大
コロナ禍によって物流業界が打撃を受けたのは、大口顧客が多いBtoBの需要が低迷したためです。
しかし、2022年以降はコロナ禍の波が落ち着き、ビジネス業界も少しずつ回復傾向が見られます。
2023年以降は、コロナ禍で受けたダメージを挽回するために事業の拡大へ取り組む企業も増えてくるでしょう。
それに伴い、物流業界の市場規模も拡大していくと期待されています。
輸送運賃の高騰
コロナ禍からの回復によってBtoB物流はある程度拡大すると期待されているものの、コロナ禍以前の水準にまで回復するにはしばらく時間を要すると考えられます。
それにもかかわらず、今後大幅な市場規模の拡大が予想されている要因としては、輸送運賃の高騰が考えられるためです。
世界情勢の変化にともない、原油価格を含めた物価が高騰していますが、これに連動するように輸送運賃も高騰し、結果として売上価格に反映されるというものです。
物価高騰によって売上高は上がっても、物流企業にとっての利益に反映されるとも限らないため、物流事業者は経営の効率化やコストの削減といった努力が求められます。
物流費が高騰している原因を解説|コスト削減するための解決策は?
2023年度の物流業界の動向
物流業界の市場規模を占ううえで、2023年度は重要な一年となります。
どういった施策や取り組み、法改正が予定されているのかを含め、今後の動向を詳しく解説しましょう。
「改善基準告示」の適用に向けた準備
厚生労働省では、2024年4月1日から「改善基準告示」を予定しています。
これは働き方改革の一環として、トラックドライバーの長時間労働を規制する措置です。
具体的には、ドライバーの労働時間および休憩時間を合算した拘束時間を、従来の上限である年間3516時間から、原則3300時間・最大3400時間に短縮するというものです。
また、1ヶ月単位では、従来の原則293時間・最大320時間から、原則284時間・最大310時間へと短縮されます。
さらに、1日単位での休息時間で見ると、従来は継続8時間以上であったものが、変更後は継続11時間以上を基本とし、9時間を下限となります。
ドライバーの勤務時間は従来に比べて減少することになり、企業では2024年4月1日の適用に向けて2023年度から就業規則などの変更も含めて準備に追われることになるでしょう。
「ロボット宅配」の解禁
2023年度の物流業界における重要なトピックとして、ロボット宅配の解禁があります。
ロボット宅配とはその名の通り、宅配用のロボットが公道を自走し、ユーザーの自宅前まで荷物や飲食物を届ける仕組みのこと。
深刻化する物流業界の人手不足をカバーするために、自走式のロボットで省人化を図る狙いがあります。
ロボット宅配は、いわゆる自動運転車とは異なり、走行スピードは時速6km程度に制限されています。
これは人間が早歩きをしたときの速度と同等で、車道ではなく歩道を通ることが前提となります。
宅配用のロボットには指定の標識や非常停止装置を取り付けるなど細かいルールが定められており、事業者はこれに従う義務があります。
「レベル4自動運転」の解禁
ロボット宅配の解禁に合わせて、もう一つ重要なトピックとして挙げられるのが「レベル4自動運転」の解禁です。
これは私たちがイメージする自動運転そのものであり、ドライバーが同乗しなくてもクルマそのものが状況を判断し、走る・曲がる・止まるを制御します。
物流業界におけるレベル4自動運転では、特にドライバー不足が深刻な地方での活躍が期待されています。
なお、物流事業者が自動運転による宅配を行う場合には、都道府県公安委員会に対し運行計画を提出のうえ許可を得る必要があります。
また、万が一に備えトラックへ同乗または遠隔監視する「特定自動運行主任者」を配置する義務も定められています。
物流業界における現状の課題と解決策
コロナ禍からの回復にともない、市場規模の拡大が予測されている物流業界ですが、将来の展望は決して明るいと断言できるものではありません。
どういった課題があり、それらをどう解決していく必要があるのか詳しく解説しましょう。
深刻化する人手不足への対応
日本では深刻な人手不足に直面していますが、物流業界も例外ではありません。
むしろ、数ある業種のなかでも物流業界の人手不足はより深刻度が高いといえるでしょう。
求人募集をかけても十分なエントリーが集まるとも限らず、大手物流会社ですら採用に苦慮している現状があります。
物流業界は業務の性質上、マンパワーに頼るほかない側面もあります。
だからこそ、適正な待遇や条件を提示し、職場環境の改善につとめ優秀な人材を確保することが求められるでしょう。
物流業務の最適化
優秀な人材を適正な待遇・条件で採用するためには、企業として十分な売上や利益を上げられることが前提となります。
そのためには、従来の業務プロセスや手段に固執するのではなく、つねに最良の方法がないかを検討し改善していくことが重要です。
たとえば、荷主企業の協力を得ながら、業務を分担するのもひとつの方法といえるでしょう。
在庫管理や倉庫での保管、出庫管理などは荷主企業に依頼し、それ以外の荷役や輸送、配達などに分担することで、限られた人員でも業務が回せるようになります。
テクノロジーの積極活用
上記で紹介した解決策の一例は、あくまでも業務プロセスやマンパワーといった要素であり、改善が期待できるのは一部に過ぎません。
恒常的に増え続ける荷物の量や業務負荷を根本から解決するためには、さまざまなテクノロジーを積極的に活用していくことも重要といえるでしょう。
たとえば、従来はドライバーの勘や経験を頼りに決めていた配送ルートの選定を、AIのシステムに任せることで、事故や渋滞を考慮しながらスムーズな配送が実現できるでしょう。
また、今後実用化が期待されているドローンの配送なども前向きに検討することで、人手不足にいち早く対応できるようになります。
OTSはアパレル・ファッション・ジュエリーに特化した物流アウトソーシング専門会社
一口に物流業務といっても、取り扱う商材によってノウハウは異なります。特にアパレルやファッション、ジュエリーといった商材は、多品種少量の小口配送が多く、在庫管理や発送管理にも手間がかかります。
これまでアパレルやファッション、ジュエリーといった商材の物流ノウハウがなく、今後新たに参入を検討している企業は、ぜひ一度OTSへご相談ください。
数多くのメーカーや小売店、卸売企業の物流をサポートしてきた実績と経験があり、取り扱う商材の種類や量に応じてさまざまなアドバイスや業務のサポートも可能です。
まとめ
物流業界はネット通販のニーズ拡大などによって、市場規模そのものは拡大していくと予想されています。
しかし、物価や人件費の高騰などが迫るなかで、企業として生き残っていくためにはさまざまな工夫・対策が不可欠です。
今回紹介した業務の最適化やテクノロジーの積極活用も含めて、自社でできることは何かを考え、着実に実行に移していきましょう。

OTS PR

最新記事 by OTS PR (全て見る)
- 【オーティーエス】2025卒会社説明会開催中 - 2024年3月11日
- 不動在庫(デッドストック)がもたらすデメリットと対処法 - 2023年6月19日
- オムニチャネルとはどんな戦略?メリットを解説|成功事例も紹介 - 2023年6月14日
ブログの読者になる
メールで受け取ることができます。
関連記事
-
-
センター見学にお越し頂いたお客様の言葉で感じたこと
OTS マーケティング部
-
-
ファッション業界のパートナーとして
OTS マーケティング部